新NISAの成長投資枠の投資先に迷っている場合、高配当株投資がおすすめです。
新NISAの成長投資枠と高配当株を組み合わせることで、非課税で安定的な配当収入を確保しながら、長期的な資産形成を実現できます。
本記事では、新NISAにおける高配当株の選び方から、具体的な投資戦略、配当金生活を実現するためのポートフォリオ構築方法まで、実践的な情報をご紹介していきます。
配当金をたくさんもらえる「高配当株」とは?
株式投資で配当金収入を得られる「高配当株」について、基本的な仕組みから詳しく解説します。
株式投資で配当金がもらえる仕組み
株式投資には、2つの魅力があります。
- 株価が上がって得られる利益(値上がり益)
- 定期的にお金がもらえる「配当金」

このうち配当金は、会社が得た利益の一部を株主に還元するものです。例えば、1株1,000円の株を100株持っていて、1株あたり50円の配当金が出る場合、年間で5,000円(50円×100株)の配当金収入が得られます。

配当金は、株式を保有していればもらえるよ
配当金の支払いは、多くの会社で年2回(中間配当と期末配当)行われます。中には年4回配当を行う会社もあり、定期的な収入として期待できます。
どんな株が高配当株と呼ばれるの?
「高配当株」とは、一般的な株と比べて配当金が多い株のことです。具体的には、配当利回りが3%以上の株を指すことが多いです。
- 安定した収益基盤を持つ大企業に多い
- 電力・通信・不動産など、インフラ関連企業に多い
- 成熟企業で設備投資の必要が少ない会社に多い
配当金の利回りはどう計算するの?
配当利回りは、株価に対する年間配当金の割合です。
【配当利回りの計算式】
配当利回り = 年間配当金 ÷ 株価 × 100(%)
具体例で見てみましょう:
- 株価が2,000円
- 年間配当金が80円の場合
配当利回り = 80円 ÷ 2,000円 × 100 = 4%
高配当株の利回りは、普通の預金金利(0.01%程度)と比べるととても魅力的な数字です。



ただし、株価の変動リスクがあることも忘れないでね
この配当利回りは、投資する銘柄を選ぶときの大切な判断材料の1つになります。ただし、配当利回りが高すぎる(例えば10%以上)場合は、逆に会社の財務状態に問題がある可能性もあるので注意が必要です。
新NISAで配当金投資を始める前に知っておきたいこと
新NISAの成長投資枠を利用すれば、配当金投資をより効率的に進められます。まずは、配当金投資を始める前に、新NISAの成長投資枠について基本的な特徴を理解しましょう。
- 配当金や株の売却時の利益に税金がかからない
- 新NISAで個別株に投資できるのは成長投資枠のみ
- 成長投資枠の年間投資枠は240万円
- 成長投資枠はつみたて投資枠と併用できる
配当金や株の売却時の利益に税金がかからない
投資で得た利益や配当金には、通常税金がかかります。しかし、下図のように新NISAを利用した場合、投資で得たお金に税金がかかりません。


新NISAで株に投資した場合、
- 配当金にかかる税金が0円になる
- 株を売ったときの利益にも税金がかからない
と、配当金と値上がり益の両方が非課税の対象になります。


新NISAで個別株に投資できるのは成長投資枠のみ
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠が用意されています。
このうち、個別株に投資ができるのは、成長投資枠のみです。つみたて投資枠での対象商品は、投資信託に限られており、個別株には投資ができないので、注意しましょう。


成長投資枠の年間投資枠は240万円
新NISAにおける、成長投資枠の年間投資枠は240万円です。つまり、1年間で240万円までは、投資で得たお金に税金がかかりません。





毎月定額で投資をする場合、月20万円分を投資できるよ
成長投資枠はつみたて投資枠と併用できる
新NISAに用意されている、つみたて投資枠と成長投資枠は、併用して使用することが可能です。


ちなみに、成長投資枠の年間投資枠は240万円でしたが、つみたて投資枠の年間投資枠は120万円となります。



2つの枠をフルで併用すれば、年間360万円の投資ができるよ
新NISAで高配当株を買うメリット
「配当金生活」を目指すなら、高配当株と新NISAの成長投資枠の組み合わせが効果的です。どんなメリットがあるのか、確認してみましょう。
- 定期的な収入が期待できる
- 預貯金より高い利回りが狙える
- 株価が下がっても配当金は安定的にもらえる
- 配当金が増える可能性がある
- 市場の変動に強い安定した投資
定期的な収入が期待できる
一般的に、高配当株に投資すると年に2回から4回の配当金を受け取れます。この定期的な収入は、将来の生活設計に役立ちます。



日本企業だと年2回、米国株の場合は年4回のことが多いよ
複数の銘柄に分散投資すれば、毎月のように配当金を受け取ることも可能です。
預貯金より高い利回りが狙える
普通預金の金利が0.01%程度なのに対し、高配当株の利回りは3%から5%程度が一般的です。
例えば、100万円を投資した場合、普通預金(金利0.01%)の利息は100円に対し、高配当株(利回り4%)は4万円の配当金が受け取れます。



さらに、新NISAならば、配当金に税金がかからないから、実質的な利回りはさらに高くなるよ
株価が下がっても配当金は安定的にもらえる
景気変動の影響を受けにくい業界(電力・通信・生活必需品など)の高配当株は、株価が変動しても配当金は比較的安定しています。
配当金が安定している業界の例:
- 電力・ガス:家庭の光熱費から安定収入
- 通信:携帯電話料金から安定収入
- 日用品:日々の生活必需品を扱う



ただし、配当金が減る(減配)や無くなる(無配)リスクがあることも忘れないでね
配当金が増える可能性がある
業績が好調な企業は、配当金を増やすことがあります。この「増配」により、投資時の利回りより実質的な利回りが上がっていきます。
例えば、投資開始時は、株価2,000円で配当金80円(利回り4%)だとしても、利回り5%になると、配当金は100円に増えます。



配当金の額は、企業の利益に連動することが多いよ
市場の変動に強い安定した投資
高配当株は、一般的に景気変動に強いと言われています。高配当を出す企業は大企業に多く、経営や業績が安定している傾向があります。
このため、市場全体が下落するような場面でも比較的安定した値動きを示します。



これは、高配当株投資の魅力の1つだね
新NISAで高配当株投資のデメリット
高配当株投資には様々なメリットがありますが、同時にリスクも存在します。新NISAで投資を始める前に、これらのデメリットをしっかり理解しておきましょう。
- 株価が大きく下がるリスクがある
- 配当金が減額や停止になることもある
- 高配当だけを狙うと投資先が偏る
株価が大きく下がるリスクがある
高配当株も一般の株式と同じように、株価が下落するリスクがあります。配当金は魅力的でも、株価の値下がりで大きな損失を被る可能性があります。
例えば、100万円で購入した株式が80万円まで下落すると、年間4万円の配当金をもらっても、含み損は20万円になります。



配当金を受け取れても、株価そのものが下落した場合、トータルとしては損失になるね
配当金が減額や停止になることもある
企業の業績が悪化すると、配当金が減額(減配)されたり、最悪の場合は配当金の支払いが停止(無配)されたりすることがあります。
配当金が減額・停止するケース:
- 業績の大幅な悪化
- 企業を取り巻く環境の変化
- 経営戦略の転換
高配当を維持してきた企業でも、急激な環境変化により配当金を見直すことがあります。
高配当だけを狙うと投資先が偏る
配当利回りだけで投資先を選ぶと、特定の業界や企業に投資が集中してしまう可能性があります。



一般的に、電力・ガス、通信、金融などに投資が集中することが多いよ
このような偏りは、特定の業界が不振になったときにリスクが高まる原因になります。



複数の業種に分散投資を行うのが大切だよ
高配当株に投資する際の注意点
高配当株で安定した配当収入を得るには、いくつかの重要な注意点があります。失敗しないための3つの基本ルールを詳しく解説していきましょう。
- 複数の銘柄に分散投資を心がけよう
- 配当利回りだけでなく財務状況もチェック
- 配当金は株式数比例分配方式で受け取る
複数の銘柄に分散投資を心がけよう
1つの銘柄に投資を集中させると、大きなリスクを抱えることになります。分散投資で資産を守りましょう。


「卵は1つのカゴに盛るな」という格言があるように、資金を複数の銘柄に分散させることで、特定の銘柄が大きく下落しても、全体の損失を軽減できます。
複数の業界や銘柄に分散して、投資しましょう
配当利回りだけでなく財務状況もチェック
高配当だけに目を奪われると、リスクの高い投資をしてしまう可能性があります。企業の健全性も重要です。
財務状況をチェックする基準(一例):
- 純利益が安定している
- 借金(有利子負債)が少ない
- 配当性向が75%を超えていない



あくまでも一例として、複数の観点から精査してね
配当利回りが8%を超えるような銘柄は、経営に問題がある可能性があるので、注意が必要です。
過度に利回りが高い企業には注意しましょう
配当金は株式数比例分配方式で受け取る
新NISAで配当金を非課税で受け取るためには、「株式数比例配分方式」で配当金を受け取りましょう。
配当金の受取方法は4つありますが、非課税で配当金を受け取れるのは「株式数比例配分方式」のみです。他の方法になっている場合は課税されてしまうため、気をつけましょう。


配当金は、株式比例分配方式で受け取る
高配当株投資を成功させる買い方・運用方法
高配当株投資を長期的に成功させるには、資金の使い方と運用方法について理解することが大切です。実践的な方法を分かりやすく解説していきましょう。
- 受け取った配当金の活用方法を考える
- 株価が下がるリスクを減らす購入方法を知る
- 長期保有の重要性を理解する
受け取った配当金の活用方法を考える
配当金の活用には主に3つの方法があります。高配当株に投資をする際には、どのように配当金を活用するか、予め考えておきましょう。
- 生活費として使う
- 追加の収入源として家計の助けになります
- 同じ株を買い増す(再投資)
- 複利の効果で資産が増えるスピードが加速します
- 新しい銘柄へ投資する
- リスクの分散が進みます



20代・30代の時は、再投資で資産形成を加速させ、定年になったら、生活費として使うという考え方もあるよ
複利の効果について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参照して下さい。


株価が下がるリスクを減らす購入方法を知る
株価の変動リスクを抑えるため、投資のタイミングと方法を工夫することが大切です。一度に全額を投資するのではなく、時期を分けて買う手法が効果的です。



株式投資では、タイミング投資が大切だよ
市場環境を見ながら、以下のようなタイミングで投資を進めましょう。
- 決算発表後の一時的な下落時
- 権利落ち日の値下がり時
- 市場全体のショック時による値下がり時



配当株は、権利落ち日に一時的に株価が下落することがあるよ
長期保有の重要性を理解する
高配当株投資は、短期的な値動きにとらわれず、企業の成長を待つ姿勢が重要です。配当金の増加や会社の成長を見据えて、じっくりと運用していきましょう。
下図のように、長期で保有すればするほどリターンのばらつきは小さくなり、さらに損をするリスクが減っていることがわかります。


特に配当金が減額されたり、業績が大きく悪化したりした場合は、保有継続を慎重に検討する必要があります。長期投資で成功を収めるには、配当金の大きさだけでなく、その安定性や成長性も重要な判断材料となります。
高配当株を選ぶポイント
魅力的な高配当株を見つけるには、いくつかの基準があります。企業の実力を見極める3つのポイントを詳しく解説していきます。
- 連続して配当金を増やしている会社を探す
- 安定して配当金がもらえる会社の特徴を知る
- 株主還元に積極的な会社を選ぶ
連続して配当金を増やしている会社を探す
高配当株を見つける際には、配当金を長期にわたって増やし続けているかを確認しましょう。連続して増配している企業は、経営の安定性が高い傾向にあります。このような企業を探す際は、以下のポイントに注目します。



日本一の連続増配企業は花王だよ
増配実績をチェックする基準:
- 最低5年以上の増配継続
- 業績の成長に応じた増配
- 急激な増配ではない
安定して配当金がもらえる会社の特徴を知る
安定した配当金を維持できる企業には、共通する特徴があります。以下のような要素を持つ企業は、配当金の安定性が期待できます。
- 参入障壁の高い事業を持つ
- 定期的な収入源がある
- 景気変動の影響を受けにくい
- 高い市場シェアを持つ



参入障壁が高いと、ライバルが参入しにくくなるよ
具体的な業種では、電力・ガス・通信といったインフラ関連企業や、食品・医薬品などの生活必需品メーカーが該当します。これらの企業は、不況時でも一定の収益を確保できる傾向にあります。
株主還元に積極的な会社を選ぶ
株主還元に熱心な企業は、安定した配当金が期待できます。このような企業を見つけるには、企業の中期経営計画なども参考に、株主還元方針を確認しましょう。配当方針を明確に示し、実際にそれを実行している企業は信頼性が高いと言えます。
例えば、以下は東急不動産ホールディングスの株主還元方針の資料です。


おすすめの高配当株投資先
最後に、具体的な投資先について、見ていきましょう。



あくまでも一例として参考にしてね
- 武田薬品工業:4.49%
- KDDI:3.12%
- 東京海上ホールディングス:2.62%
※配当利回りは2024年3月期の数値です
各企業について、先程解説した高配当株を選ぶポイントについて、確認しましょう。これらの企業は、配当利回りが高いだけではなく、連続増配年数・参入障壁・市場シェアなどの観点から、安定して配当金をもらえる可能性が高いと考えられます。
- 武田薬品工業
概要 | 国内製薬企業のリーディングカンパニー |
---|---|
配当利回り | 4.49% |
連続増配年数 | 30年以上にわたって非減配を継続 |
参入障壁 | 新薬開発には莫大な研究開発費と時間が必要で、参入障壁が非常に高い |
景気変動耐性 | 医薬品は必需品であり、景気変動の影響を受けにくい |
市場シェア | 日本最大の製薬会社であり、グローバルでも上位に位置 |
- KDDI
概要 | 日本の主要な通信事業者の一つ |
---|---|
配当利回り | 3.12% |
連続増配年数 | 22年 |
参入障壁 | 通信インフラの構築には莫大な投資が必要で、新規参入は極めて困難 |
景気変動耐性 | 通信サービスは現代社会に不可欠であり、景気変動の影響を受けにくい |
市場シェア | 日本の携帯電話市場で約30%のシェアを持つ大手キャリア |
- 東京海上ホールディングス
概要 | 日本最大手の保険グループの一つ |
---|---|
配当利回り | 2.62% |
連続増配年数 | 5年連続増配 |
参入障壁 | 保険業界は規制が厳しく、新規参入が容易ではない |
景気変動耐性 | 保険は必需品的な性質があり、景気変動の影響を受けにくい |
市場シェア | 国内損害保険市場でトップクラスのシェア |
まとめ:新NISAの成長投資枠で配当金投資を始めよう
この記事では、新NISAの成長投資枠を活用した高配当株投資について解説しました。要点をまとめると以下の通りです。



もし分からない点があれば、記事に戻って内容を確認してみてね
- 新NISAの成長投資枠で高配当株投資を行うことで、非課税で安定的な配当収入を確保しながら長期的な資産形成が可能
- 高配当株は一般的に配当利回りが3%以上の株を指し、安定した収益基盤を持つ大企業に多い
- 新NISAの成長投資枠は年間240万円まで非課税で投資でき、つみたて投資枠と併用可能
- 新NISAで高配当株投資のメリットは、定期的な収入、高い利回り、安定性、増配の可能性、市場変動への強さ
- デメリットとしては、株価下落リスク、配当金減額・停止の可能性、投資先の偏りがある
- 高配当株投資の注意点は、分散投資、財務状況のチェック、長期保有を前提とした銘柄選び
- 配当金の活用方法には、生活費として使用、同じ株への再投資、新規銘柄への投資がある
- 投資タイミングは、決算発表後の下落時、権利落ち日、市場全体のショック時が有効
- 銘柄選定では、連続増配実績、安定した収益基盤、株主還元への積極性をチェックする
- おすすめの高配当株投資先の一例は、武田薬品工業、KDDI、東京海上ホールディングス